高齢化に伴い、高齢者の事故・事件が多発しています。最近では一週間に一度はそういったニュースを目にする気がします。
もし、高齢になった自分の親が事故・事件の当事者になったら、自分や家族の誰かがその賠償責任をとることになるのか?主に賠償責任の面から調べてまとめてみました。
目 次
認知症の親が踏切事故!その賠償額はいくら?
2007年、愛知県大府市の91歳になる男性が踏切内で列車にはねられて死亡した事故がありました。この男性は認知症を患っており、徘徊中の出来事だったのです。
この場合を含め、踏切事故の損害賠償は、事故の当事者である本人にあります。
しかし、この事故では本人が亡くなってしまったので「その債務は遺族が相続する」ことになるのです。
このようなことは誰もが想像したくないことですが、高齢の親をもつ身となればいきなりの損害賠償を追う可能性があるわけです。
ただ、この賠償額が資産に比べて大きすぎる額となれば、相続放棄をすることができるので相続した遺族は賠償責任を免れられることができます。
鉄道会社が720万円の損害賠償を求める訴訟を起こす
遺族は賠償責任を免れられてひと安心するまもなく、今度は認知症を患っていたということで鉄道会社が家族側に720万円の損害賠償を求める訴訟を起こしたのです。
ここで問題になったのが、「家族の監督責任」。
介護していた家族は男性が認知症であることを知っていて、事故を起こす予想ができたのに阻止しなかった点で過失があるとされ、家族の責任が問われたのです。
この裁判は、最高裁まで9年間の歳月をかけて争われた結果、同居の妻と別居の長男は監督義務者にあたらず、賠償責任はないと判決が出ました。
このケースから判断できることは、認知症の親を介護している家族の監督責任が相当強い人でない限り責任をとわれないという判断ができます。
損害賠償額720万円は高い?安い?
では、もし責任を問われた場合の「損害賠償額720万円」のその根拠はなんなのでしょうか?この額は、鉄道会社が勝手にだしたものではなく、実損に基づいて出された金額です。
事故で列車が汚れた清掃費用、壊れた修理費、何時間も列車が止まったことによる逸失利益(損害額)を合計したものが、720万円なんです。
しかし、この事故はローカル線で起きたものだったので鉄道事故とはいえ少額の約720万円だったのですが、これがもし東京の山の手線など繁忙路線を何時間も止めてしまったとしたら、その損害額はなんと数千万円単位になると言われています。
それを考えるのなら、高齢の親だからこそ、やさしい思いやりの気持ちをもって日々の生活を見守っていってあげましょう♪
高齢の親が自動車事故!その賠償額はいくら?
親が高齢になったら、自動車運転のリスクを考えなければなりません。
実際に私の父親は現在84歳で自動車運転をしています。もちろん「認知機能検査」などを受け免許の更新も行っています。
しかし、近年では高齢社会ということもあり、75歳以上の高齢者が道路を逆走したり、児童の通学の列に突っ込んでしまうなどの事故が増えてきています。
ここで実際に事故を起こしてしまった場合、「行政手続き」と「刑事事件」、「民事事件」の3つの手続きが同時に進んでいくことになります。
「行政手続き」というのは、道路交通法違反で免許の点数の減点や免許取り消しなどの処分です。
「刑事事件」については、人身事故など相手が死傷している場合は「過失運転致死傷罪」に該当してきます。・・・→ここまでが、事故を起こした本人の責任で家族は関与してきません。
しかし、3つ目の「民事事件」になるといわゆる損害賠償責任の問題になってくるのです。
相手にケガをさせたり、死亡させた、ということになればその損害をどう賠償するかということです。
家族にとって一番問題となるのはこの部分ですよね。
任意保険の補償額「無制限」に入っていれば・・・
補償額が「無制限」となる任意保険に入っていれば、全額保険から支払いとなるので本人(親)や家族の負担はありません。
自賠責保険のみの加入なら・・・
強制加入の自賠責保険にしか入っていないか、任意保険に加入していても補償額が十分でない場合は、その不足額分は自分で支払わなければなりません。
ただ、その任意保険の自賠責だと補償の上限が「死亡で3,000万円」、「高度後遺障害で4,000万円」だけなので、賠償額が1億円、2億円と高額になってしまった場合は対応しきれません。
このようなケースで本人(親)に支払い能力がない場合は、おのづと自己破産などの対応をせざるを得ないわけです。。
高齢の自動車運転者が、認知症だったら・・・
ここで問題なのが、高齢の自動車運転者が「認知症」と診断されていた場合なんです。
認知症の本人が運転をしたら事故を起こすかもしれないと予想できたにもかかわらず、家族や子どもたちが運転を黙認していた、また車を貸したという捉え方になれば、「過失責任」とみなされ、家族や子どもにも賠償責任が生じる可能性があります。
当然のことですが、認知症を患っていたからといって賠償額が下がるわけではないのです。
では、その損害賠償額はいくらになるのか?
それは、ケガをした人、亡くなった人の逸失利益(損害額)がいくらになるのかでほぼ決まってきます。
働き盛りで年収が高い人が亡くなった場合の賠償額
被害者への損害賠償額が一番高くなるのが、「働き盛りで年収が高い人が寝たきりになってしまう」ケースです。
この方が亡くなったしまった場合は、将来稼げたはずのお金から生活で使ったであろうお金を差し引いて算出するのでけっこうお金が減ることになるのです。
ところが寝たきりになってしまったら・・・
将来稼げたお金 + 介護費用 が必要になることから、当然賠償額は高くなってしまう訳です。
子供が亡くなった場合の賠償額
突然の子どもの死に親の悲しみが深いので賠償額も膨らんできそうですが、実際にはさほど大きな額にならないのが実状なのです。
子どもがまだ小さいと、将来どんな職業について、どれだけ稼ぐの予想ができないので、平均的な年収を基に計算するしかありません。
しかも実際に働きはじめるのは、10年~20年先になるとその分の金利分を割り引くことになるので金額はさらに低くなります。
高齢者が亡くなった場合の賠償額
ここ最近、道路横断中に高齢者が跳ねられるといったニュースをよく耳にしますよね。すでに退職している高齢者が亡くなった場合は、将来稼げるお金が年金程度になりますので、それから生活費で使う分を差し引くと賠償額は低めになってしまうのです。
高齢の親の自動車保険は、「無制限」が絶対に必須!
これまであげた賠償額で不安を抱きたくなければ、親が乗る車の自動車保険は、任意保険の対人・対物の補償を「無制限」にしておくべきです。もちろん、高齢の親でなくても車を運転するドライバーにとって必須であると言うべきでしょう。
また、高齢ということもあって自動車運転においては色々な問題も含む事故が多くなってきています。
そんな時に役にたつのが「自動車保険の弁護士費用特約」というもの。これは、トラブルが発生した場合に弁護士さんを通して解決できたその弁護士費用を上限300万円まで保険金で賄ってくれるというものです。
さらに、人身傷害補償といって、「自分に過失があった場合にその過失分も保険金で払ってもらえる」というものや他人からの損害賠償請求に備えることができる「個人賠償責任保険」も有用できます。
こちらは、自動車保険や火災保険などの損害保険に特約でつけられるようになっています。
両親の老々介護による殺人事件!子どもにくる影響とは?
最近ではこんな極端なケースだが、 TVなどのニュースから聞こえてきます。
そうです、「老老介護の極限的な負担とストレスからくるうつ状態での両親間の殺人事件」。もし身内でこんなことが起こってしまった場合、家族は「犯罪者の身内」ということになり、子どもや家族にどんな影響があるのでしょうか。
親であっても殺人事件となれば、 TVや新聞にでてしまうわけですから、当然ですが会社にも知られてしまうでしょう。ですが、たとえそうなっても基本、人事上の不利益を被ることは原則してありません。
会社では、社員本人との問題に限定されていますから、もし本人が何かの違法行為でもしない限り、懲戒になったりはしません。つまり、労働契約関係には一切何も影響しないのということです。
ただ、周りから影口をたたかれたりはするかもしれませんが、会社側がそれをもとに何らかの処分をすることは違法にとなります。
もし、不利益を被った証拠があれば、それを根拠に十分に戦うことも可能になるわけです。
問題が起こったときには、早めに弁護士に相談することをお勧めします。
弁護士事務所には、何かのツテがあるとスムースなのですが、ツテがない場合は、
・弁護士会の法律相談
・市区町村の無料相談
・国が運営する法テラス
などで探してみるといいでしょう♪
親も高齢となれば何かとトラブルや事故、詐欺などの事件にまきこまれたりする可能性も高くなります。
ある程度専門性が高い交通事故や医療過誤などの場合は、インターネットなどで専門的にやっていそうな弁護士さんを探されることをお勧めいたします。
高齢者の犯罪も増加している
最近、国の統計などから気になることがありますが、高齢者(65歳以上)による犯罪が増え続けてきているという調査結果が出ていました。
なんと検挙数が圧倒的に多いのが、「万引きを含む窃盗」。しかし、ここ20年ほどでは、「暴行」「障害」といった暴力によって他人に損害を与えた粗暴事件も激増しているのです。
今後もこの傾向は続くとみられますので親の老後を見守っていく家族としては、念のための備えも必要かと思っています。