親が認知症と診断されたら、徘徊など手におえない状況になったらと不安になり、最悪の状況を考えがちですが、まずは認知症の正しい知識を身につけることがとても大事になります。
認知症の親のために、そして自分たち家族のためにもしっかりと認知症ならではの「ケア体制」や安全な「住環境」の整え方について知っておくことで不安なく介護生活を送ることができるでしょう。
認知症ならではの「ケア体制」とは?
親が認知症と診断されたら、はじめに「介護体制」を整えなくてはなりません。
まずは、要介護認定を受けていない場合は、親が住んでいる地域の役所に「要介護申請」をすることから始めてみてください。
そこで「要介護」認定されると「介護保険によるサービス」が受けることができます。
介護保険は、40歳になると被保険者として介護保険に加入しています。つまり、親はこれまで長い間、介護保険料を収めてきたのですから、介護サービスを利用するのをためらう必要は全くありません。安心して「介護保険のサービス」を受けられてください。
次にケアマネージャーに相談して「ケアプラン」を立ててもらいましょう。
さらに認知症に関する情報が欲しければ、「地域包括支援センター」に相談するなど、こちらも有効に活用してぜひ利用してみてくださいね。
また、親が認知症と診断されたなら、一人でかかえこまずに家族である兄弟姉妹で「これから、親をどのように支えていくべきか?」をしっかり話し合うことも欠かせません。
認知症ではない片方の親がしっかりしている場合などでも、親の希望を聞いて周りの家族がこれからどうサポートしていくかを家族全員で共有することをお勧めします。
兄弟姉妹が遠方にいて、誰か一人が主に介護をすることになったとしても他の兄弟姉妹はまかせっきりにするのではなく、すこしでも親の介護にかかわるようにしましょう。
なぜなら、特に認知症の場合は、家族にかかる負担はとても大きなものとなり、
家族の協力なしでは乗り切ることが非常に難しくなります。
親はもちろん大切ですが、子どもやその家族の人生も本当に大切だからです。
認知症の安全な「住環境」の整え方
一人暮らしをしていた親が認知症になった場合、今後の介護生活を考えて「親が子供の家に引っ越す」という考えをする人がいるのですが、これは逆効果になる場合が多いです。
なぜなら、認知症になった親は、子供の家に引っ越すと急激な変化が本人の大きな負担となって、認知症をより悪化させてしまうことになるからです。
親のことを心から思うのであれば、子供世帯が親の家に引っ越したり、それが無理なら、実家の近所に引っ越すという方法も考えてみてもいいでしょう。
では、「安全な住環境」の整え方について書いてみますね。
まずは、「失火を防ぐ」
認知症で最も心配なのが、「火の不始末による失火」です。失火は、第三者に多大な迷惑をかけてしまうこともあり、ケア体制を整える際には、ぜひ「失火対策」にも重点をおいて行いましょう。
たとえば、「一定の温度以上になると自動消火する」などの安全装置付きのものに替える。
「ガスではなく、電気のIHクッキングヒーターに替える」です。
暖房器具は、「石油ストーブやガスストーブの代わりに、エアコンやオイルヒーターを使用する」など、安全に安全を考慮した最善をつくすといいでしょう。
次に、「転倒を防ぐ」
認知症の親でなくとも高齢になるとよく転んでしまうものです。そのはずみで骨折などしてしまったら、大変なことになってしまいます。
そうならないために「階段や玄関など段差の多い所には、手すりをつける」といいでしょう。
あと足元などにおいてある物につまずいて転ぶというケースも多いです。とにかく出入り口や通路付近には、「物を絶対に置かない」を徹底しておきましょう。
認知症を親に「告知」するべき?
医療情報に関しては、基本、認知症になった本人のものなので、今後の治療や介護をスムースに行うことを考えるなら、告知したほうがいいといえるでしょう。
しかし、認知症についてどれだけ知っているかで個人差はあるのですが、とてもネガティブなイメージが強く、突然「あなたは、認知症です。」と告知されても、ショックを受けるだけで不安で立ち直れないという人が多いのも事実なのです。
親の性格や状況を考慮して、「告知はしない」という選択もあり得るでしょう。
ですが、親の老後を考え、親を思う優しさがあるのなら、はっきり「認知症だよ」とはいわないまでも「年相応のもの忘れだから、大丈夫。」、「老化だから、しょうがないよね。」といった言葉にかえ、伝えてあげることも安心感を与えてあげられる思いやりなのかもしれません。
親には、嘘をついているようで・・・という方もいらっしゃるかもしれませんが、不安をあおってしまうようなことがあっては、これからの早期治療や介護生活に悪影響を及ぼしてしまうことになってしまいます。
とはいえ、早期治療がはじまり、忘れ外来への通院が続いたり、認知症の薬を服用したりすることで何も言わなくても親本人も自然と理解し、自覚してくれるようになります。
親本人がどのような気持ちで認知症を受け入れられるかによって、これからの生き方を大きく左右されると言ってもいいでしょう。
そのためにも、「認知症を簡単に受け入れたくない」、「家族に知られたくない」という本人の気持ちを尊重して、相談にのってくれる担当の医師との出会いを望みたいものですね。
どうする?親の「運転免許証」
平成14年6月1日に道路交通法が一部変更になり、その中には認知症のことも記されています。
「認知症の疑いがある方もしくは、認知症と診断された方の運転免許は、当人もしくは、家族などの申請により、適性検査の実施や診断書の提出を行い、取り消し又は経過をみるために停止処分となることがあります。」というものです。
認知症と伝えずに親に車の運転を控えるように説得することは大変なことかもしれませんが、車を運転して交通事故でも起こしたら大変です。
移動には、タクシーやバスを利用して家族が送迎するなどの体制を整えることで運転免許証を返納するように親を説得することも欠かせません。